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〈後編〉次世代に伝えたい旅 ~日本が誇る世界自然遺産~
想像を超えるスケール感、奇跡的な絶景と豊かな生態系。
日本はもちろん世界が誇る「世界自然遺産」を旅することは、自然への意識や行動をアップデートするきっかけになる。
後編では、海外旅行地理博士の小林克己氏に、日本にある世界自然遺産について指南してもらった。
※この記事は後編です。前編はコチラ
Text:Kumiko Suzuki,Natsuko Sugawara
表紙写真:屋久島 仏陀杉
小林 克己(こばやし かつみ)海外旅行地理博士
早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒。海外旅行地理博士。日本旅行記者クラブ会員、総合旅行業務取扱管理者。世界遺産をはじめ、グルメや鉄道、温泉などをテーマに国内外の旅の指南本を著述。著書に『誰も知らないとっておきの世界遺産ベスト100 』(SBクリエイティブ)ほか多数。
◆日本が誇る世界自然遺産
想像を超える5つの絶景を旅しよう
日本にある世界自然遺産は現在5ヵ所。
「美しい国に生まれたのだから、まずは国内の自然遺産をめぐってほしい」
という小林氏に、壮大なスケールの自然が息づく土地を旅先とする魅力を教えてもらった。
白神山地
[ 青森県・秋田県 ]世界自然遺産登録年:1993年
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©yankane
世界最大級のブナの原生林
日本で初めて世界自然遺産に登録された白神山地は、秋田県北西部から青森県南西部にまたがる広大な山岳地帯。世界最大級のブナの原生林が広がり、初夏は新緑、秋は紅葉が美しい。なかでも小林氏のおすすめは、ブナ原生林を抜けて暗門の滝へ至る散策道。「山歩きの初心者でも歩けるルート。比較的簡単に行ける青池や日本キャニオンは実は世界自然遺産の登録地域や緩衝地域ではないので、実際に自然遺産に触れたいなら緩衝地域であるこちらへ」。運がよければ、特別天然記念物のニホンカモシカに出合えるかもしれない。
屋久島
[ 鹿児島県 ]世界自然遺産登録年:1993年
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その姿を見るには往復10時間のトレッキングが必須。
樹齢数千年の巨木が茂る
白神山地とともに1993年に世界自然遺産に登録された屋久島。鹿児島県の大隅半島から南南西約60㎞に浮かぶ島で、ほぼ全域が山地であることから「洋上アルプス」の異名を持つ。海からの湿った風がこれらの山々にぶつかり世界屈指の多雨地帯となっており、その独特の気候が樹齢何千年もの屋久杉の原生林を育んでいる。一番の見どころは、推定樹齢7200年の縄文杉と根回り43mという大王杉。「この2つをめぐる1日ツアーがあるので健脚な方はぜひご参加を」と小林氏。バスで行けて気軽に散策できる西部林道もあり、ガジュマルの巨木やヤクザル、ヤクシカなどが見もの。
知床
[ 北海道 ]世界自然遺産登録年:2005年
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ヒグマが生息する野性味あふれる名峰。
流氷が育む極寒の自然
流氷が観察できる世界最南端の地でもある知床。流氷による気温の変動や海と森が隣接する特異な環境が独自の生態系を進化させ、オジロワシやシマフクロウ、ゴマフアザラシなど、ほかにはいない希少な野生動物が生息する。また、人類が開拓し得なかった手つかずの自然も絶景。小林氏が推薦するビュースポットは、知床横断道路の中間地点にあたる知床峠からの羅臼岳の眺め。天候によっては遥か国後島を望む大パノラマが眼前に広がる。
小笠原諸島
[ 東京都 ]世界自然遺産登録年:2011年
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絶海の島々からなる秘境
小笠原諸島は東京の南約1000㎞の太平洋上にあり、30ほどの島々からなる亜熱帯地域。大陸と陸続きになった歴史がないため、動植物が独自の進化を遂げ「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる。父島、母島以外は無人島で、特に南島は原始的な生態系が残る貴重な島だ。石灰岩による独特の景観も魅力で、「純白の砂と赤土、青く透明な海の対比は特筆すべき美しさ」と小林氏も絶賛。入島には制限もあるが、未知の自然を求めて訪れたい。
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
[ 鹿児島県・沖縄県 ]世界自然遺産登録年:2021年
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濃い瑠璃色が美しく、国の天然記念物に指定されている。
希少な固有種の宝庫
2021年、最も新しく世界自然遺産に登録されたのが「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」。登録の理由は、それぞれの島の成り立ちを反映した独特な生物進化にある。アマミノクロウサギやルリカケス、ヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなど、固有種の多さは国内随一。小林氏もこの地域を旅するなら個性豊かな野生動物との出合いをすすめる。「奄美大島のナイトツアーがおもしろい。高確率でアマミノクロウサギが見られます」。
前編では、【番外編】として「世界遺産の"卵"?」をご紹介。
世界自然遺産の暫定リストも、ぜひチェックしてみてください。
前編はコチラ。
※掲載の情報は2023年10月1日現在のものとなります。
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