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癒しの森でリトリート ~森林セラピー基地 赤城の森でリラクゼーション~〈後編〉

健康のために森に入る、新しい森の楽しみ方「森林セラピー」。クレディセゾンが運営する「赤城自然園」は、森林セラピー基地として訪れる人々の心身を癒している。

科学的に実証された、その癒し効果をひもといていこう。

※この記事は後編です。前編はコチラ

Text:Rie Tamura,Natsuko Sugawara
Photograph:Keisuke Nakamura

人間と自然が共生する
赤城自然園の森の力

群馬県のほぼ中央にそびえ立つ赤城山。その西麓、標高600~700mに120ha(一般公開エリア60ha)もの広さを誇る「赤城自然園」がある。

ここは周辺の植生とは異なる特別な森だ。「人間と自然の共生」の実現をめざし、40年近くかけて植生を入れ替え、創られた森であり、低地に咲く草花から高山植物まで、約500種の四季折々の山野草が調和のとれた生態系の中でいきいきと育っている。

森の中には池があり小川が流れ、北関東に生息する1800種を超える昆虫類や、70種以上の鳥類を自然に近い形で見ることができる。

赤城自然園は、生理・心理実験により癒し効果が実証され、NPO法人森林セラピーソサエティにより「森林セラピー基地」に認定されている。

森林セラピーとは、科学的な証拠に裏付けされた森林浴のこと。森を楽しむことで心身の快適性が向上し、保養効果が高まり、リラクゼーション効果や免疫機能改善などが期待できるというわけだ。

心身に癒しを与える森の力を最大限に享受するには、「五感」を働かせることが大切だ。現代の人工的な生活環境下では、つい忘れがちな「五感を使うこと」を意識し、森の中で目や耳、鼻、手足、舌などの五感のアンテナを研ぎ澄ませてみよう。

植生が豊かで、多様な生物が棲みつく森「赤城自然園」。
絶滅の危機にさらされる稀少な植物や、足を踏み入れるのが困難な山岳に咲く山野草も、
あたかも自然にあるような姿で見ることができる。

木々の息吹や風のざわめきを感じ、全身で心地良さを味わうことで、ストレスから解放され、リラックスすることができるはずだ。

赤城自然園は、デザインされた森ならではの散策のしやすさも特徴。バーク(木の皮)を敷き詰めた足にやさしい散策路、間伐材で作ったベンチやイス、洗い場などが完備されており、気軽にゆっくりと森林浴を楽しみつつ散策することができる。

森の深呼吸を浴びながら、いきいきした自然の鼓動を感じられる場所。癒しの森、赤城自然園でスペシャルな一日を過ごしてみてはいかがだろうか。

「五感」で感じる
赤城自然園の森の癒し

人間に備わる5つの感覚「五感」を研ぎ澄ませることで、森林のもつ癒しの力を効果的に得ることができる。

視覚

森の風景を見ることで身体におよぶリラックス効果はとても大きい。ただ森の緑を眺めるだけでも、血圧の低下や脳活動の鎮静化といった作用をもたらす。

聴覚

木立の葉が風に揺れる音、小鳥の鳴き声、小川のせせらぎ。このような森の音を聴くことで、血圧の低下や脳活動の鎮静化などの効果を得ることができる。

嗅覚

香りが脳に働きかける作用は直接的で大きな影響がある。深呼吸することで、森林にたくさん放出されている森の香り成分「フィトンチッド」を取り入れることができる。

触覚

手のひらや足の裏で、木の葉や木の幹に直接触れる。裸足で芝生の上を歩いたり、寝転がったりする。そうすることで、よりくつろいだ感覚や心地良さが感じられる。

味覚

赤城自然園の水は井戸水。新鮮で力強い大地の滋味を口にすることで、心の充足感はもちろん、身体にも良い効能を享受することできる。


森林セラピー特別プログラム
森deリトリート

赤城自然園では、健康増進やリラックスを目的としたさまざまなプログラムを提供している。ここでは、2022年にスタートした森林セラピープログラムを紹介しよう。

心身をリラックスさせて
五感が開く感覚を楽しむ

森林セラピーガイドとともに、5時間をかけて赤城自然園を散策し、森林セラピーを体験するプログラム「森deリトリート」。

リトリートとは、日常から離れた場所で心身をリセットすること。ストレスや悩みで凝り固まった心と身体を癒すのに最適なプログラムだ。

「つまりハイキングでしょ?」と思われるかもしれない。しかし、ハイキングが健康のために一定の距離を「歩く」ことを目的にしているのに対し、森林セラピーの真の目的は、「自分と向き合うこと」と「リラックス」である。

歩くのと同じくらい立ち止まること、音を聴くこと、手のひらに感じること、寝転ぶことなど、さまざまな動きを重視し、全身でリラックス効果を実感できるように考えられている。
五感が開く感覚を楽しめるのも、このプログラムの醍醐味だ。

森のBGMに耳を傾けるうちに、はじめは聞こえなかった森のさまざまな音が耳に飛び込んでくるようになる。また、ブナやミズナラの大木に抱きつくことで、木肌の感覚や体温が木の種類によって異なることに気づくことができる。

午後のプログラムは安息がテーマ。普段は立ち入れないエリアで思い思いに過ごしながら、自分と向き合う。美しい自然の中で心と身体を緩めて、「最高の何もしない贅沢」を満喫しよう。


人と自然が共生する森
赤城自然園ストーリー

もとは荒れた雑木林の土地を美しく豊かな森に再生させた赤城自然園。この理想郷のような森をとおして、運営を担うクレディセゾンはさまざまな社会課題に取り組んでいる。

人と自然が触れ合う場
としての森づくり

赤城自然園が最初にオープンしたのは1993年。今から30年近く前に㴑る。セゾングループ代表を務めていた堤清二氏が、デパートの屋上でカブトムシやオタマジャクシを初めて目にするこどもたちの姿にショックを受けたことをきっかけに、もともとはリゾート開発のために取得した土地を人々が自然と触れ合える〝総合自然観察園〟として再生するプロジェクトに着手。

「本物の自然を知らない現代のこどもたちのために、できる限りありのままの自然を計画的に再生し、自然と肌で接して感動を得る場を作る」ことを目標に、当初はスギやマツがパッチワーク状に生えた荒れた樹林地だった土地を長い年月をかけて豊かな林相をもつ森へと築きあげた。

現在、赤城自然園には多種多様な生物が生息し、低地に咲く草花から高山植物、ヤマシャクヤクやシラネアオイといった絶滅危惧種までもが群生しており、自然にできた森よりもさらに豊かで美しい。

そんな理想の森を実現したのは、開業以来目標としてきた「人間と自然の共生」という考え方に由来する。できるだけ自然の状態を保つことをめざしているが、里山の森は放置され続けると枯れ枝や枯れ木で覆われて林内環境が悪化し、植物や生き物が生息しにくい荒れた森となる。

つまり、美しい森を維持するにはある程度人の手が必要なのだ。

赤城自然園では現在に至るまで広大な土地の植生を入れ替え、自然に同化させつつ林内環境を注意深く整備し続けることで、植物が育ちやすく、昆虫や小動物が棲みやすい環境を維持してきた。

その結果として実を結んだのが、理想郷のような唯一無二の森、赤城自然園である。

また、群馬県指定の絶滅危惧種、準絶滅危惧種である多数の植物の植栽を行うなど、園の取り組みは地域の環境保全にも少なからず貢献している。

植樹が体験できるプログラムなど、園内では自然と共生する心を育む
体験型環境学習も行われている。

赤城の森をとおして行う
クレディセゾンのCSR活動

実は環境保全以外にも、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が定められる何十年も前から赤城自然園をとおしてさまざまな社会貢献や地域貢献、社会課題の解決への取り組みが行われてきた。

そのひとつが、これまで紹介してきた森林セラピーをはじめとする健康を増進するためのアクティビティであり、これらは現代人の健康問題の解決に確実に寄与しているといえるだろう。

また、特にこどもへの環境教育に重きを置き、自然体験をとおした環境学習にも力を入れている。国立青少年教育振興機構の「自然体験と自立的行動習慣の関係についての調査」によると、自然体験が豊富なこどもほど「自律性」「積極性」「協調性」に優れている傾向が見られるという。

園内ではこどもたちが自然に親しみ、その体験を豊かな人生の基盤づくりにつながることを目的に、親子のための自然観察会や昆虫観察会などを定期的に開催。

さらには、森を維持するための植樹プログラムなど、自然と共生していく心を育むための学びも提供している。

地域貢献においては、県や市と連携しながら観光の活性化に協力し、園を運営することで地域雇用の創出を促した。また、近隣の人々も頻繁に訪れ地域住民の憩いの場にもなっており、来園者はこどもから高齢者まで幅広い。

安全対策のために全長10㎞の歩道のバーク(木の皮)を毎年敷き替えるなど、より多くの人たちが等しく自然に親しめるよう園内がきめ細かく整備されていることも、SDGsの精神につながる赤城自然園ならではの試みだ。

ほかにも、足が不自由な方も森の奥まで散策できるカートツアーを導入したり、特別支援学校の学習の場として利用してもらうなど、社会福祉の観点からもすべての人が安心して楽しめる森づくりが日々実践されている。

いわば、赤城自然園という理想の森をとおして、理想とする社会像を提示しているかのようだ。そして、これらすべての取り組みには、その根底に堤清二氏から引き継がれた「豊かな森を、未来を、こどもたちへ」という理念が脈々と流れている。


赤城の森
里山の自然がもたらすもの

人と自然が生態系のバランスを保つ里山。そんな里山モデルとしての赤城自然園の魅力について、総支配人を務める内山純一氏にうかがった。

内山 純一(うちやま じゅんいち)
株式会社クレディセゾン 赤城自然園 総支配人

大学卒業後、株式会社西武クレジット(現 株式会社クレディセゾン)に入社。提携カード営業、九州支店、関西支店勤務の後、セゾン自動車火災保険株式会社、静銀セゾンカード株式会社に出向。ほぼ30年間、一貫してクレジットカードに関する営業を推進した。2020年3月より赤城自然園総支配人に就任。全く畑違いの業務内容に戸惑いながらも、お客様に喜んでいただくため、日々改善に努力している。

内山純一氏が赤城自然園の総支配人になって2年半。その間、風邪を引いたり、体調を崩したりしたことは皆無なのだそう。

「果たして森林の効果なのかはわかりませんが、心身ともに健康的になりました。都会で暮らすより晩酌も旨い(笑)」

自身は自然園から車で20分ほどの場所に住むが、山々が近くにある暮らしは格別だ。四季が身近に感じられ、春夏秋冬の草花を遠出しなくても日々眺めることができる。

「園を訪れる人の7割が群馬県内の方ですが、皆さん四季折々の自然を愛でることに長けている。それも、庭園や植物園で花を観賞するより、自然の中に咲いている素朴な草花を見つけて眺めるようなことが大好きですね。園には、そういった野生の草花がほかの場所より数多く咲いています」

「つまり、ここでは自然の美しさが少し強調されているんです。ですから、皆さん驚いて喜んでくださる」

自然の森よりも、自然の豊かさ、美しさがより伝わる。それが赤城自然園の魅力でもあるという。

同時に、赤城自然園は忠実に本物の自然を再現している森でもある。

「私たちがめざす里山生態系保全は、草や樹木などの植物だけでなく、微生物から昆虫、鳥類、小動物などすべての生き物の生態系のバランスがとれている状態を保つことです。極力、自然の力を尊重して間伐などは最小限にとどめ、化学肥料なども使うことはありません」

「そこがほかの植物園や自然公園などとは違うところで、自然の生態系がうまく成立している。ここに来れば花を愛でるだけでなく、木立を渡る風や小鳥の鳴き声、森林の香りなど本物の自然を五感で体感することができるのです」

今後もそういった自然体験を少しでも多くの人たちに提供していきたいという内山氏。

「特にこどもたちに自然を肌で感じてほしい。美しい森をただ眺めるのではなく、草花で遊んだり昆虫採集をしたり、自然の中で体験することが大切です。そういった思い出こそが、将来、自然への愛着や環境意識を高めることにつながるのではないでしょうか」


癒しの森でリトリート ~草木の深呼吸を浴びよう~〈前編〉 はコチラ


※掲載の情報は2022年5月1日現在のものとなります。


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