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〈ビジネスとゴルフの相互作用・前編〉人生を前へ進める ビジネスとゴルフの相互作用

「ゴルフがうまければ出世できる」なんて今は昔。果たしてそうだろうか。ゴルフを極めていく過程では、マネジメント力や論理的思考力、メンタル力、コミュニケーション力といったビジネスにも不可欠な能力が求められる。

MGPゴルフスクールの南澤聡氏にゴルフとビジネスの関連性をうかがった。
前後編に分け、お届けする。

※この記事は前編です。後編はコチラ


Text:Rie Tamura
Photograph:Keisuke Nakamura
タイトル写真:Koji Kitagawa/アフロ

南澤 聡(みなみさわ さとし)
株式会社MGP 代表取締役/日本プロゴルフ協会公認A級ティーチングプロ

1967年、神奈川県出身。約4年間の米国ゴルフ留学を経て、現在は横浜・湘南を拠点にチーム総生徒数1,300名を超える最強プロ集団《チーム南澤》を率いるカリスマティーチングプロ。スクール生からは数多くのクラブチャンピオンを輩出し、そのレッスンは高い評価を得て、多数の有名企業とスポンサー契約を結ぶ。また、技術指導はもちろん、企業幹部向けのビジネスゴルフやワーキングゴルフの指導、講演も行っている。

ゴルフの上達は
ビジネススキルをも向上させる

コースでの立ち居振る舞いに
人となりが表れる

一流の経営者やビジネスパーソンには、ゴルフをたしなむ人が多い。ゴルフをとおして取引先や目上の人物と良好な関係を築き、ビジネスを円滑に進めようという目論見もあるだろう。

しかし、それだけではない。ゴルフとビジネスには、相互に高めあえる深い関連性があるのだ。

「ビジネススキルをあげるには、ゴルフが最適」と語るのは、株式会社MGP代表取締役の南澤聡氏だ。保険会社の営業マンからプロゴルファーへと転身し、現在はカリスマ的な人気を誇るティーチングプロとして数多くのビジネスパーソンを指導している。

ゴルフコースをどのように攻略していくのか戦略を立てる「コースマネジメント」は経営に通じる、と南澤氏は言う。

「ゴルフの場合、最終的な目標はコースのスコアです。そのためにはコースでどのような立ち居振る舞いをし、スコアメイクをするのか。さらには普段の練習をどのような形で生かすのか。つまり、目標を達成するために自分が何をすべきか逆算して組み立て、そのプランを実践していくのです。さながら経営のようですよね」

ただし、ゴルフが経営と異なるのは、他人任せにできないという点だ。

「経営者は、仕事を部下に任せることもできますが、ゴルフに関しては自分がやるしかないのです。自分で鍛錬し、やったことがすべてスコアにつながります。ある意味、経営よりさらに自分自身を極めなければいけないので、そんなところがゴルフが経営者に好まれるゆえんでしょう」

ゴルフ場では4人一組でのプレーが基本であるため、同伴者との交流が深まり、ビジネスにつながることも多々ある。

ここで覚えておきたいのが、ゴルフは人間性が出るスポーツだということ。ラウンド中の立ち居振る舞いに良くも悪くも人となりが表れるのだ。

ラウンド中の言動には、人となりが表れるもの。
同伴者へのさりげない気遣いは、ビジネスにも求められる素養だ。
©MichaelSvoboda

南澤氏は尊敬する経営者から「キャディーさんへの態度を見れば、その人がわかる」といわれたことがある。

「ビジネスにおいて重要な同伴者にはいい話をしたり気を遣ったりできても、キャディーさんをぞんざいに扱い、言葉遣いが荒くなる人がいます。逆に、『キャディーさん』ではなく『〇〇さん』と名前を覚えて呼ぶ気遣いができ、クラブを持ってきてもらったら『ありがとう』といえる人もいます」

「このような言動に人となりが表れますし、それは同伴者から見られているものなのだと気づかされました」

さらに南澤氏が常々こうなりたいと憧れるのが「自分の影を消せる人」だと言う。

「ゴルフでは同伴者がショットやパターを打つときには、視界に入らないのがマナー。これはできて当たり前なのですが、すごく気が利く人は視界に入らないだけでなく、絶対に同伴者の気に障らないところに立つのです」

「誰も見ていないところで、そういう立ち居振る舞いをしている人がいるんですよ。自分の影を隠して、ほかの3人の同伴者に気を遣いながら、自分のプレーもうまい人。そういう人は尊敬しますし、また一緒にラウンドしたいなと思います」

特にビジネスゴルフの場では、言動の良し悪しで「ビジネスパートナーとして好ましい人物か」をジャッジされていることを心に留めておきたい。

ゴルフと経営に共通する
論理的思考

南澤氏のゴルフとの出合いは26歳のとき。上司に勧められて始めたのをきっかけにのめり込み、翌年には会社を退職し、アメリカへ単身ゴルフ留学したというから驚きだ。

ゴルフとのファーストコンタクトが成人してからだったため、とにかく論理的にゴルフスイングやコースマネジメント、練習方法の勉強に励んだという。

それが土台となり、南澤氏ならではの論理的思考を取り入れたコーチングスタイルが確立されていった。

「大人になってゴルフを始めた人は、頭で理解しないと身体が動かない。頭で理解するためには、最終目的から逆算して今やらなければいけないことを論理的に伝えていく必要があります。ゴルフを教え始めた当初、スイングのゴール地点をもたずに練習している方があまりにも多いことに気づきました。これは全く論理的ではないですよね」

「論理的に考えるには、まず最終的な目標を明確にする。そのために自分に何が足りないかを明確にする。そして、足りない部分に関してどういう練習をしなければいけないかを明確にする。それらを提案するのが、論理的なコーチングです」

ゴルフの上達に不可欠な論理的思考は、ビジネスにも欠かせない。ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は、15ヵ年計画を毎週月曜のミーティングで見直すという。この一流の経営手法は、ゴルフに通じるところがある、と南澤氏は語る。

「15年先を明確に見据え、論理的に細かくスケジューリングし、それを一週間ごとに変える。つまり、必要に応じて目的を修正しながら現状を把握し、問題を改善しつつ現場に落とし込む。これはビジネスにおいても、ゴルフにおいても共通する考えだと思います」


ゴルフ歴1年で「賞金王になろう」と米国プロゴルフスクールの門を叩いた南澤氏。
そこでの学びが現在のゴルフ理論に生きている。

コースでしか味わえないゴルフのおもしろさ

「ゴルフの本当の魅力は、コースにこそある」と南澤氏は断言する。

バッティングセンターで味わえるのは野球の一部でしかないのと同様、打ちっぱなしで味わえるのはゴルフの一部でしかないというわけだ。

「ゴルフコースは、自然の中で自分を思いっきり表現できる場。大人がまるでこどものようにはしゃぎ、楽しみで前日は眠れないくらいの遠足気分に浸ることができます。実際に広大なコースにボールが飛んでいくのは気持ちのいいものです」

「コースでは、ボールを打つというゲームに、スコアをメイクするというゲームが加わります。先ほどお話ししたコースマネジメントが必要になるので、ぐんとおもしろくなるのです。頭や身体、五感を使いながら、大きなゲームを組み立てていく。これはコースでしか味わえない楽しさです」


四季折々の美しさを愛でながら、自然の中で思いきり自分を表現する。ゴルフコースでしか味わえない醍醐味だ。

確かにコースには、練習場にはない開放感や達成感がある。ただ、そうはいってもゴルフ初心者にとってコースデビューはハードルが高く、なかなか一歩を踏み出せないものだろう。

南澤氏は、「自信をもつこと」と「段階を踏むこと」により、ゴルフをもっと身近に感じられる、と話す。

「ゴルフへのハードルを低くするためには、自信をもつことが大事。自信がないと、練習場やゴルフ場で周りに迷惑をかけるんじゃないかと不安になりますよね。技術的な面でいうと、自分がうまくなることで自信がもてます。
そのためには、基本を大切にして練習すること。基本とは、スイングの最終目的を理解し、そのためにやるべきことをひとつずつクリアしていくことです」

「練習場の次は、ショートコース(距離の短い小さなゴルフ場)、そして本コースと段階を踏めばいいのです。もし、コース内でうまく打てなくなったら、途中でギブアップして次のホールからやり直してもいい。初心者の方には、固く考えずにチャレンジしていただきたいですね」

戦略を立てて運営するマネジメント力、周りを気遣えるコミュニケーション力、最終目的から逆算して組み立てる論理的思考力。これらはゴルフによって培われ、ビジネスに生きてくる能力だ。

南澤氏の言うように、ゴルフは「人生を豊かにするもの」であるとともに、ビジネスを一歩前へ進めてくれる頼もしい存在になりうるだろう。


〈ビジネスとゴルフの相互作用・後編〉ゴルフ上達のための3つのメンタルトレーニング はコチラ


※掲載の情報は2022年4月1日現在のものとなります。


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