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〈ビジネスとゴルフの相互作用・後編〉ゴルフ上達のための3つのメンタルトレーニング

ゴルフがうまくなるためには、「ショット力」「ショートゲーム力」「マネジメント力」「メンタル力」の総合的な力が必要になる。

なかでも「メンタル力」を鍛えることで、スコアは劇的に向上するという。
後編では、ゴルフにおけるメンタルトレーニングの方法をティーチングプロの南澤聡氏が指南する。

※この記事は後編です。前編はコチラ

Text:Rie Tamura
Photograph:Keisuke Nakamura
タイトル写真:Koji Kitagawa/アフロ

南澤 聡(みなみさわ さとし)
株式会社MGP 代表取締役/日本プロゴルフ協会公認A級ティーチングプロ
1967年、神奈川県出身。約4年間の米国ゴルフ留学を経て、現在は横浜・湘南を拠点にチーム総生徒数1,300名を超える最強プロ集団《チーム南澤》を率いるカリスマティーチングプロ。スクール生からは数多くのクラブチャンピオンを輩出し、そのレッスンは高い評価を得て、多数の有名企業とスポンサー契約を結ぶ。また、技術指導はもちろん、企業幹部向けのビジネスゴルフやワーキングゴルフの指導、講演も行っている。

横浜のハンズゴルフクラブにて、ドライバーショットを打つ南澤氏。
練習場でのショットがコースでも再現できるかどうかは、メンタル力にかかっている。

①気持ちを乗り換えて
 最後まで集中力を保つ

南澤氏は「25%理論」を提唱している。これは、ゴルフ力の向上に必要な能力である「ショット力」「ショートゲーム力」「マネジメント力」「メンタル力」の4つが25%ずつ、計100%で成り立つことを表している。

「ショット力さえあがればスコアは良くなると考える人が多いのですが、残りの3つの能力も同じくらい大切です。とりわけゴルフの技術があがるにつれて重要性が増し、割合が大きくなるのがメンタル力。プロに至っては、50~70%をメンタル力が占めます」

練習場ではいいショットが打てるのに、コースに出ると結果が残せない。それはメンタル力が足りないからだ、と南澤氏は指摘する。

では、どうすればメンタルは鍛えられるのか。カギとなるのは「完璧主義をもち込む限り、ゴルフに成功はない」という言葉だ。

「完璧にゴルフをやろうとするのではなく、自分を許すことがメンタルを成長させる第一歩。完璧を求めるから、失敗したときにネガティブな発想がわき、メンタル力が低下するのです」

ネガティブな発想が出ると、30分から1時間もの間、メンタル力は低下するという。

ゴルフには上記の4つの能力が必要。
技術の向上に伴い、メンタル力の占める割合は高くなる。
コースで結果を残すには、メンタルトレーニングが不可欠だ。

ゴルフにおいては2~3ホールを台なしにしてしまう。そうならないために、南澤氏自身が実践する気持ちの切り替え方法を聞いた。

「ミスショットをするなど失敗したときには、くよくよ悩まず、すぐにゴルフのことを頭から切り離します。『夕飯は何を食べよう』『今夜はどんなテレビを観よう』など、全く関係ないことを考えるのです。いい意味での能天気さがあると、メンタルは強くなります」

ビジネスにおいても、経営者が夜にサウナに行ったりランニングをしたりして、仕事から気持ちを切り替えることはよくある。

ゴルフでは、この切り替えを短時間に何度も行うのだ。

「集中力には容量があります。ネガティブな発想はメンタルを低下させ、集中力のタンクを減らします。18ホール、4時間の競技で最後まで集中力を保つには、気持ちのオン・オフを切り替えるトレーニングを続けてください」

②イメージトレーニングで
 「透明の心理」の壁を越える

イギリスの作家、ジェームズ・アレンは「人は考えたとおりの人間になる」という言葉を残している。ゴルフも同様で、自分はどんなゴルファーになりたいかイメージするトレーニングが大事だ、と南澤氏は説く。

「人は、自分はこれくらいの人間だと勝手に思い込んでいるものです。私はこれを『透明の心理』と名づけました。この透明の心理が、スコアをあげる妨げになっていることがあります」

「例えば、『スコア100を切りたい』ということは、『100が切れない』と思っているということ。こういう人は、コースに出て前半をスコア48で回っても、実は心の中で『自分はこんなにできるわけがない』と無意識に考え、後半はスコア54くらいで帳尻を合わせて、『102くらいが妥当だろう』と納得してしまう。ここに無意識の心理、つまり透明の心理が作りだす壁があるのです」

この透明の心理を向上させるトレーニング方法があるという。アメリカ修業時代に伸び悩んでいた南澤氏は、このトレーニングを取り入れた途端、平均スコアが77から74にアップしたそうだ。

「まず自分がめざすスコアを現実的な範囲内で最大値まであげます。例えば100をめざすなら『90を切りたいな』と思ってほしいのです。そして頭の中で、前半45、後半45でラウンドするイメージトレーニングを何度も何度もくり返します。すると、『自分はハーフ45で回れるんだ』と脳が勘違いを起こします」

人間の脳は、現実と想像の区別がつかないといわれている。この特性を利用して、想像したことを現実だと脳に思い込ませようというわけだ。

「めざすゴルファーになるためには経験値が最も必要ですが、頻繁にゴルフ場に行くことは難しいですよね」

「イメージトレーニングなら、ベッドの上で寝転びながら無料でできるので、費用対効果が非常に高いです。イメージトレーニングをうまく活用して透明の心理を向上させれば、いつのまにかスコアはあがっているはずです」

③自分を発見しながら
 欠点に向き合い修正する

前編「人生を前へ進める ビジネスとゴルフの相互作用」で記したとおり、コースでの立ち居振る舞いには、良くも悪くもその人の人となりが表れる。

同伴者の何気ない言動が、その人の本質を表していたりするものだ。このようにゴルフ場は、他人を発見する場であると同時に、自分を発見する場でもある、と南澤氏は語る。

「ラウンドは自分発見の旅。素が出てしまうので、こんないいところもあれば、悪いところもあるのだと気づかされます。自分の嫌な部分を見つけたら、目を背けるのではなく向き合って、普段の生活から修正していく。そうすることでゴルフにおける立ち居振る舞いが良くなり、プレーの向上、さらには人間力の向上につながると思うのです。これもひとつのメンタルトレーニングであり、自分磨きでもあります」

「コースは、メンタルを鍛え直す場であると捉えることもできます。ゴルフをトリガーとして、普段の自分の考え方を変えていくことにより、人生が豊かになっていくはずです」

南澤氏が提唱する「25%理論」のとおり、ゴルフ力を高めるためにはメンタルの保ち方が非常に重要だ。精神状態がプレーに直結するため、心に余裕をもつことが大切だという。

「ゴルフ場には早く着いておくことをおすすめします。ぎりぎりに到着すると、時間に追われて焦りが出てしまいます。最低でも1時間か1時間半前には着き、練習場に行ってボール慣れをするといいでしょう」

「もし可能なら、プレーの前にゴルフ場で食事をとるくらいの時間的な余裕があると、心にも余裕が生まれます。私は試合の日も朝早めにゴルフ場に着き、レストランでゆったりとした時間を過ごしています。この気持ちの余裕がゴルフにも表れるので、ゆとりのある時間の組み立てをし、ラウンドに臨んでください」


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※掲載の情報は2022年4月1日現在のものとなります。