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人と動物を繋ぐ旅 ~アフリカの大地で地球を知る~

近年、地球温暖化や海洋汚染など、さまざまな問題から地球を守ろうとするSDGs推進活動が活発になっている。
4月22日の「アースデイ」は、そんな環境保護への支援を示すために提起された日だ。
日本人女性で唯一の南アフリカ政府公認サファリガイドである太田ゆか氏を迎え、アフリカでの環境保護について、そして今、我々が地球を守るためにできることは何かを語ってもらった。

Text:Kumiko Suzuki,Natsuko Sugawara
表紙写真:© 太田ゆか


南アフリカ政府公認サファリガイド
太田 ゆか(おおた ゆか)

1995年、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。立教大学観光学部在学中にボランティアでアフリカに行ったことがきっかけで環境保護に興味を持ち、南アフリカのサファリガイド訓練学校に留学。大学卒業後、2016年から南アフリカ政府公認サファリガイドとして活動を開始し、サバンナで暮らす。
著書に『私の職場はサバンナです!』(河出書房新社)がある。


人と動物、自然が共存できるよろこびを
アフリカの大自然の中で体験する

動物たちの環境を守るため
サファリガイドをめざす

アフリカ大陸の最南端、南アフリカ共和国。大自然が果てしなく広がるこの国のサバンナ(※1)は、太田ゆか氏の家であり仕事場だ。
世界中から訪れる観光客をサファリカーに乗せ、野生動物を探し、その生態や現状について解説する。
日本から遠く離れた南半球のアフリカで、なぜサファリガイドという職業に就こうと考えたのだろうか。

※1 サバンナ:乾季と雨季を持つ熱帯・亜熱帯にある草原地帯。アフリカ、南アメリカ、オーストラリアなどに分布。

「実はもともとアフリカにこだわりがあったわけではないんです。
こどもの頃から動物への興味がとても強く、中学生までは獣医になって動物を守ることを夢見ていました。
でも理系が苦手だったので、獣医はあきらめて動物たちが棲む環境を守る仕事に携わりたいと思うようになりました」

大学では観光学を専攻したものの、環境保護とは直接繋がらなかったため、ボランティアやNPOでのアルバイトなど校外活動で接点を持つことを模索。さまざまな国や地域を訪れ、ボランティアに参加するように。
そしてたまたまアフリカでのボランティアを見つけ、ボツワナ共和国でのサバンナ保全プロジェクトに参加することになる。

「動物の王国といえばサバンナのイメージがあったので、学生時代に一度は行っておきたいという気持ちがありました。いざ行ってみたら、もう『ここしかない!』。
それまでも海外のいろんな国立公園の自然に触れてきましたが、アフリカのサバンナはこれまでに見たことのない規模の大自然が広がっているんです。
一番印象的だったのが、動物と人間が一緒に暮らしていること。まったく人工物が見えない自然の中にゾウやライオンが見えたかと思うと、すぐそばに村があったりする。
人間と動物が同じ生態系の中で暮らす環境を守る仕事をしたい。そう思わせてくれたのが、このボランティアでした」

さらにその気持ちを後押ししてくれたのは、ボランティアたちのガイドを務めた若いフランス人女性のサファリガイドの存在だった。外国人でありながらアフリカのサバンナで働き、動物保護に貢献。熱心な仕事ぶりを目の当たりにして、「もしかしたら私もできるかもしれない」と考え、サファリガイドをめざしたのだという。

その後、日本の大学に在籍しながら現地の訓練学校に通い、日本人女性で唯一の南アフリカ政府公認サファリガイドの資格を取得。努力して得た仕事の意義や目的を、こう教えてくれる。

「サファリガイドは観光客をサファリカーに乗せて、走りながら野生動物を探すのが仕事です。地面に残された足跡やフンなどのヒントを見つけ、探偵のようにたどりながら情報を読み取りつつ動物を追っていく。一番のスキルとしては、動物を見つけられるかどうかになります。
そして、動物を見てもらったあとに、ただ『楽しかった、かわいかった』という感動で終わってしまうのではなく、サバンナの現状を知り『動物たちをこうして守っていかなくちゃいけないんだ』と感じてもらう。そういったところまで踏み込んでガイドをするのが、サファリガイドの役割であり、目的だと思っています」

屋根や仕切りのないサファリカーを運転してガイドする太田氏。
野生動物が通った痕跡を発見するたび、動物の生態から痕跡の分析方法まで丁寧に解説。
©Jack Borowiak

サバンナで暮らすよろこびと
難しさを感じる現状

太田氏にとって、大自然が広がるアフリカのサバンナガイドでいられることは、このうえないよろこびだ。

「私にとってサバンナで暮らせることが何より幸せ。家のすぐそばにライオンやゾウがいるという環境自体に幸せを感じます。
毎日サバンナで暮らしているとそれに慣れてしまいそうですが、朝、大きな太陽が昇ったり、夕方、真っ赤な太陽が沈んでいく光景を見るたびに『ここにいて良かった』と実感します。それと、感動することも多いんです。
以前生まれたてのシロサイの赤ちゃんに出会ったことがあり、新たな誕生に立ち会えてとてもうれしかったですね」

とはいえ、サバンナでの暮らしはそれがすべてではない。人間と動物が隣り合わせのサバンナで暮らす中で、年月が経てば経つほど難しさも実感しているという。
そのひとつが、サバンナのエリアが減少していることだ。

「サバンナだった土地が温暖化の影響を受けたり、経済発展を理由に耕され、エメラルドや銅を求めて掘り起こされたりします。
昔に比べるとサバンナとして残っているエリアがとても少なくなりました。その結果、動物が村に入ってきて畑を荒らしてしまい、家畜を食べてしまうなど、農作物や家畜への被害もどんどん増えている。
逆に村の人たちも生活に困って罠を仕掛けたり、密猟をする人間がいたり。
どちらの面からも弊害が出ています」

このような弊害が及ぼした動物たちへの影響は計り知れない。特にサイは減少をたどる一途だ。

「8年前、ここに来たときは毎日出会えたサイに、今はもう何ヵ月も会えなくなっています。
また、ナミビアの乾燥地帯では温暖化の影響が強く、10年くらい干ばつが続いたことで砂漠に適応したデザートライオン(※2)が減少し、かなり深刻な状態になっています」

※2 デザートライオン:亜種ではなく、同種で砂漠に適応した個体群。

ナミビア共和国の砂漠に生息する幻のデザートライオン。
干ばつなどの気候変動の影響で、現在はわずか150 頭ほどしか存在しないという。
© 太田ゆか

サファリツアーをとおして
アフリカの現状を知る

では、地球上の弊害から動物や植物を守るために、今我々ができるのはどんなことだろうか。

「誰でもできることといえば、最初のステップとして『知ること』だと思います。
アフリカというと、手つかずの大自然が広がっているイメージがありますが、実際に来てみると生息地が少なくなっていて、そのエリアに人と野生動物が隣り合って暮らしている。柵が間に作られ、柵があるせいで動物たちが移動できなくなっています」

そんな現状を少しでも理解するうえで、太田氏が携わっているサファリツアーが手助けの一環になりそうだ。

「サバンナに来て初めて体験し、知ることのできる大自然があると思います。現地に来て動物たちが直面している問題を目の当たりにするのと、日本で知るのではまた違う。現場で学んでもらうほどパワフルなものはないので、少しでも多くの人にアフリカに来てもらえたらうれしいですね」

サファリツアーと聞くと、ハードルが高そうな印象を持つかもしれない。
しかし、それほどハードルが高いわけでも危険が伴うわけでもないという。

「サバンナほど安全なところはないんですよ。そもそも人がいないので治安はとてもいいですし。
サファリツアーのほとんどは、ラグジュアリーロッジのようなきちんと整備された観光客向けのものが多いんです」

目を輝かせてサバンナの魅力をそう語る太田氏。
今後の目標は、現地で暮らしながら環境保護に関わることだと話す。

「サバンナで暮らしながら、残された動物と人が共存できる道を探り、対策や保護活動に携わっていくことが目標です。
また、以前サイの保護のために日本のみなさんとクラウドファンディングを実現したこともありました。そのような、日本人のガイドだからこそできることもやっていきたいですね」

サバンナを歩いて探検!
トレイルサファリツアー

南アフリカ政府公認サファリガイドの太田氏が日本語で案内してくれるサファリツアーが大人気。
なかでも南アフリカの大自然を肌で感じられる、ワイルドな〝野宿ツアー〟を紹介しよう。

サバンナの生態系を歩いて学び
夜は寝袋ひとつで野宿

通常のサファリツアーはサファリカーに乗ってサバンナをめぐるタイプがほとんどだが、太田氏がいち押しするのは広大なサバンナを徒歩で探検する「トレイルサファリツアー」。
夜寝るときもテントはなし。満天の星の下、寝袋ひとつで野宿するというとびきりワイルドなツアーだ。自分の足で歩くからこそ、自らが自然の一部になって、生き物たちの興味深い生態が見えてくる。

サバンナの生態系を歩きながら学ぶ。
トレイル専門の資格を持つガイド2名が付き添うので安心だ。
©Yanakiji
最も暑い昼間の時間帯は、寝袋に横たわってひと休みするのがサバンナでの鉄則。
日が傾くのを待って活動を再開する。
© 太田ゆか
夜はみんなで並んで寝袋に入って就寝。
早朝の雄大な朝焼けもツアーの見もの。
© 太田ゆか

トレイルサファリツアー(現地8日間滞在)
【滞在スケジュール(過去一例)

 1日目:日本発
 2日目:ヨハネスブルグ国際空港到着
      空港付近のゲストハウス宿泊
 3日目:ヨハネスブルグからサバンナまでシャトルバスで移動し、
      ロッジ宿泊
 4〜6日目:野宿トレイル
 7日目:トレイルを終えてロッジ宿泊
 8日目:ヨハネスブルグまでシャトルバスで移動し、
      空港付近のゲストハウス宿泊
 9日目:ヨハネスブルグ国際空港出発
 10日目:日本着

ツアー料金 約30~35万円
※ツアー料金には出発地⇔ヨハネスブルグ国際空港の往復費用は含まれておりません。
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次回のトレイルサファリツアーの詳細・時期はまだ決まっておりません。詳細が確定し募集開始の際は、太田ゆか氏オフィシャルサイト「Yuka on Safari」でお知らせいたします。その際は、お問い合わせページから「ツアーお問い合わせフォーム」にてご連絡ください。

Podcast「YUKA on SAFARI」
太田氏が現地から届ける耳で体験するサファリプログラム。
アフリカの魅力や現状を知って、大自然をもっと身近に感じよう。


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〈番外編〉
 サファリツアーの楽しみ方

アフリカは南半球のため四季が日本とは逆になりますが、サファリツアーに適したシーズンというのはあるのでしょうか。
また、太田さんが実感している季節ごとのツアーの魅力を教えてください。

「サファリツアーのハイシーズンは乾季といわれていて、日本では7~9月の夏、アフリカでは真逆の冬になります。この時期は雨が降らず、サバンナがどんどん乾燥していきます。葉が木から落ちて見通しが良くなり、水が干からびてしまう川もあって特定の水場に動物が集中しやすくなる。動物が見つけやすいという意味では乾季が適しています。
私が一番推しているサバンナで野宿するツアーの場合は、日本の夏の7~9月に来ていただくのがベストかと思います。でも、雨季のサバンナは景色がとても美しく、この時期のサバンナは乾季とは違う魅力があります。
私としては、一年をとおしていつでもおすすめですね。南アフリカにはサバンナのほかにも見どころがあって、ケープタウンやダーバンなどの海岸線には手つかずのビーチが広がっていたり、砂漠や山脈などもあります。いろいろな場所に立ち寄ってみると、さまざまな自然や文化を楽しめますよ」

太田さんがベースにしている南アフリカ共和国のほかにも、サファリツアーを行っているところがあるのでしょうか。
南アフリカ共和国とは違った体験ができるツアーにも興味がわきます。

「まず、ボツワナ共和国で行っているサファリツアーですね。ここには砂漠、サバンナ、塩湖、湿地帯などいろいろな生態系があります。ツアーの種類も多く、南アフリカにはないツアーがあるのが魅力です。
また、人々があたたかく、自国に誇りを持っている人が多い。そんな人々との交流の機会もありますので、ぜひ体験してみてください。
それから、ナミビア共和国のサファリツアーもおすすめです。幻のデザートライオンやアフリカゾウ、キリンなど、厳しい砂漠に適した多種多様な動物がいます。私も、そういった動物を見るツアーを今後やっていきたいと考えています」

ひと口では語りきれないバラエティ豊かなサファリツアー。ゴールデンウィークや夏休みなどの長期休暇を利用して、「地球を感じる旅」を現地で体験してみませんか。

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※インタビューの情報は2024年3月1日現在のものとなります。


❖このインタビューを音声でCHECK!
 Podcast「THIS IS US Powered by SAISON CARD」

『SAISON PLATINUM AMERICAN EXPRESS CARD NEWS』との連動プログラム、「THIS IS US Powered by SAISON CARD」。
このポッドキャストでは、様々なフィールドの第一線で活躍する、エキスパートをお招きして、その世界の魅力について、たっぷり、お話を伺っていきます。

太田ゆかさんのインタビューは、下記をタップ!
(全5回にわたってお話をうかがっています。3月15日より毎週金曜日の更新をお楽しみに!)


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